世の音楽好きをざわめかせたEP『ざわめき』に続くフル・アルバムは、この平成元年生まれのシンガー・ソングライターが大変得難い逸材であることを証明してくれる。ハース・マルティネスの世界をヒップホップ的な感性で料理したかのような"坂道"や名曲"Summertime"をドドンパで表現したかの如き"みーちゃん"などユニークな折衷センスがここでも快調に稼働しまくりだが、多彩なリズムを紡ぎ出す演奏(yoji & his ghost bandのメンバーを中心とする面々が担当)がクセの強い歌声の跳躍力や躍動感やらを加速させていくところが聴きもの。そんな独特なる声の響きに〈揺れ〉が生じるほど、映像喚起力の高い歌詞がいっそう鮮明さを増していく点も興味深い。平成最後の秋における最重要作品。